BLOG 未来は今日にある!
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作成日:2025/12/01
【BLOG】高市首相が打ち出した労働時間規制の緩和策



高市首相が打ち出した労働時間規制の緩和策について、(どういう結論が出るかはわかりませんが)労働環境の専門家としてやや違和感を抱いています。

この政策が抱える最大の問題は、日本が直面する構造的課題ー『生産年齢人口の減少と急速な少子化』ーに逆行している点です。本来であれば効率化と生産性向上で解決すべき課題を「労働時間の延長」という旧来型の手法で補おうとする発想は、時代に逆行しているように思えてしまいます。

そもそも働き方改革が始まった背景を振り返ってみると、電通の痛ましい過労死事件は確かに大きなきっかけでしたが、それ以上に重要だったのは、将来の日本社会における持続可能な働き方への危機感でした。だからこそ安倍政権は「一億総活躍社会」というビジョンを掲げ、すべての人が能力を発揮できる社会を目指したのです。

しかし今回の規制緩和発言は、こうした根本的な課題認識と向き合っているようにあまり思えないのです。

特に深刻な懸念は、この政策が女性やケアラーなどの活躍推進に与える負の影響です。長時間労働が常態化すれば、育児や家族の介護など、家庭での責任を担う働き手にとって、キャリア継続はさらに困難になります。結果として、女性を中心に豊かな能力を社会で活かすどころか、家庭内での「ワンオペ育児・介護」を助長し、社会参画を阻害する要因となりかねません。もちろんこれに付随して少子化や賃金格差の問題もよりクローズアップされることでしょう。

また、加重労働がもたらすストレス、慢性的な疲労、睡眠不足といった健康リスクも看過できません。これらは個人の問題にとどまらず、医療費増大や労働生産性低下という社会全体のコストとして跳ね返ってきます。 

真に必要なのは、限られた労働力でより高い成果を生み出すための「働き方の質的転換」です。時間ではなく成果で評価し、多様な働き方を認め、テクノロジー等を活用した業務効率化を進める。簡単ではありませんが、こうしたオプションへの取り組みこそが、日本の未来を拓く鍵となるはずです。労働時間規制緩和といった後戻りではなく、働き方の質的転換こそが待ったなしで求められていると思います。2027年度には40年ぶりに労基法の大改正が控える中、私たちは「なぜその必要性があるのか」「日本はどんな社会背景を抱えているのか」を一人ひとりがしっかりと理解することで、受動的な対応から主体的な実践に変えることが望まれます。

 村上社会保険労務士事務所
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