組織風土やカルチャーを形成する源泉になるパーパス(存在意義)やビジョン(理想像や将来像)といったものは、そもそも暗黙知であり、目の前にある課題や仕事と比較して相対的に忘れやすいものです。
組織風土やカルチャーとは、例えると「土壌」に当たる部分です。土に陽を当て、水をやり、何度も何度も耕すことで豊かな土壌となり、社員が生き生きと働くことで成長する幹となり、イノベーションや利益といった果実へとつながります。
組織風土は行動によってつくられることから、暗黙知化されているバリューを可視化させ、それを毎日、毎日、ルーティンになるまで実践しなければ定着しません。そもそも評価制度も理想とGAPとを埋めるためにあるものです。カルチャーの語源がCultivate「耕す」であることからもその真意がわかります。そのためには、まず「社長が実践して見せること」が鍵になります。
なぜなら日本の社員は、同調圧力の効いた環境に慣れ切っており、周囲の目や反応を過剰に気にする傾向があるため、たとえ「失敗をおそれずにチャレンジしよう!」というカルチャーをつくりたくても、社員自ら始めることはとても勇気の要ることです。会社を、社員を、変えたければ、先ずは「変わるべき人物」から変わるのが一丁目一番地であり、この順番を間違えると化学反応は決して起きないと断言できます。
なぜ、GAFAや欧米の企業は組織風土を作り込むのか!今の日本で例えれば、若い世代は完全に終身雇用が終わったとみています。そして今の若い人たちは圧倒的にSDGsなどへの社会意識が高い。ゆえに「どこで働くのか」以上に「何をするのか」を尊重する傾向にあるのです。会社が、それを”意味”として明確にすること!それがエンゲージメントの第一歩になります。
企業の経営層は、日本では軽視されることの多い「組織風土を戦略的に作り込み、可視化する」ことの重要性を一度手を止めて、じっくり考えてみる必要があるかもしれません。