BLOG 未来は今日にある!
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作成日:2021/03/01
【BLOG】限られた原資で効果的な配分を行う給与マネジメント



日本では高度経済成長期以後、勤続年数が増えるにつれて、ある程度仕事をこなしていれば、自然と給料が上がっていく仕組み(年功給や職能給)が数多くの企業で普及しました。その考えは働く者の固定概念としてすっかり根強いてしまった感があります。それが、これまで通り働いているのに給料が増えないということになれば、従業員の意欲に大きな影響が出てきます。

経営環境の先行きに不透明感が否めない中、人件費の源泉となる売り上げの大きな増加に過度な期待を抱くこともできず、企業は従業員の士気の低下を防ぎ、モラルを保つためにはどんな手を打つ必要があるのでしょうか。そのポイントとしては「業績管理と人事管理をいかに連動させていくか」がテーマとなります。

日本の多くの企業では、業績と賃金は未だバラバラに管理されています。業績については部門ごとに年度目標が設定され、予算が組まれ、月毎・期毎に到達度がチェックされています。一方、賃金は基本的に個人の勤続年数や年齢による年功序列体系をあまり崩さずに決まっています。業績はボーナスや昇進にある程度反映されても、給与体系そのものは、それとは無関係に管理されているのです。個々の企業が成長していた間は、このやり方でもさほど不満は出ませんでした。なぜなら成長によって若手と中高年の比率が保たれ、売り上げも増えていたので業績に貢献している人もそうでない人もまとめてベースアップや昇給することで不満を吸収できたからです。

しかし、経済が成熟期に入り、企業の成長が鈍化し、容易にベースアップや昇給もできなくなると、このやり方では社内に不満が募り、とりわけ企業の業績に貢献している従業員の不満は大きくなります。限られた原資をいかに効果的に配分し、企業の業績アップに繋げるか、近年、これまで別々に扱われてきた業績管理と人事管理を連動させる動きが徐々に出てきました。

しかし、賃金体系を変えるというのは大きな改革でどうしても抵抗が強くなります。そこで大切なのが『説得性の問題』です。業績をどう賃金に反映させるかというルールを作るにあたっては、従業員の価値観が追随し、適用される側にとってそのルールが公正と感じられる必要があります。また、決められたルールは従業員に十分に周知されなければなりません。つまり情報公開です。さらにここでいう情報公開とは、仲間に比べて貢献度が低いとされた従業員が不満を訴えたときに「彼はこの点で貢献したと評価された。君はこの点がマイナスと判断された」というように、具体的な客観的事実を根拠に、説得力のある回答を本人に説明できることを意味します。

日本人の場合、自分の意見や主張
を否定されると感情的になってしまう傾向が強いといわれます。違う意見や見方に対しても建設的に受け止めることができる、そういったことが可能になるように、中間レビューや評価に対するフィードバックの機会を適切に活かすことが重要になります。 実際にルールが運用される際にも公正性が求められます。ルールを決めるのは経営者の仕事ですが、誰が業績に貢献し、誰が貢献していないかを判断するのは管理職の仕事になります。

納得のいくルールを定めても、運用の段階で恣意的な判断が介入してしまうようでは制度は早い段階で形骸化します。 また、従業員の価値観が追随するかについても難しい問題があります。貢献度を重視した業績連動型賃金を導入しても、賃金格差を許容しない日本人の価値観を無意識に反映させ、結局、これまでの年功序列体系における賃金格差の範囲内と変わらない運用をしていたのでは、いつまで経っても従業員の価値観は変わりません。従業員の価値観からあまり逸脱したものではモラルが保てない。それも事実ですが、一方で価値観とは制度についてくるものでもあります。新しいルールが定着することで、従業員の意識も自然と「企業に貢献した人が高い給料をもらうのは当たり前」という価値観へと変貌していくのです。

そうした意識の変化は急激に現れてくるものではありませんが、だからといって短期的な不満の声に萎縮し、一度導入したものを引っ込めたり、査定の段階でやはり差をつけずに有名無実化してしまうようでは企業の変革は不可能です。経営者は『処遇と貢献度の整合性』が必要と判断して業績連動型賃金(パフォーマンス評価)を採用するわけですから、自らの判断の根拠を従業員に対して説明し、納得を得る努力を行うと同時に腰を据えてルールの定着を図らなければなりません。

 村上社会保険労務士事務所
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